パブリック・コメント制度実施要綱の考え方
パブリック・コメント制度とは、パブリック(public)は「公衆」、コメント(comment)は「意見」の意味で、町が政策等を決めるときに、その 案を広く町民の皆さんに公表し、皆さんから寄せられたご意見等を案に取り入れることができるかどうかを検討し、その検討結果(最終案)とともに寄せられた 意見等に対する町の考え方をあわせて公表していく一連の手続きをいいます。
この制度は、欧米では広く実施されており、国では平成11年4月から「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続」として各省庁に取り入れられ、また滋賀 県、静岡県や鳥取市、名古屋市、堺市、大阪市、浜松市などの地方自治体においても制度化されています。
柴田町においても、計画や条例等の策定時に各所管課の判断でパブリック・コメント制度に類似した手法を用いたことはありますが、この制度を導入すること により、町としての統一的なルールを確立し、行政運営の透明性の向上を図るとともに、町民の町政への参加機会の拡充を図り、「公平公正で開かれた町政」を 実現していきます。
1 目的
第1条
この要綱は、パブリック・コメント制度に関する基本的事項を定めることにより、政策形成過程における町民の行政参画の機会を提供するとともに、町民に対 する説明責任を果たすことで、行政運営の透明性の向上を図り、町民参加型の公平公正で開かれた町政の実現を目指すことを目的とする。
【考え方】
この制度の目的は、行政側が政策等を策定する場合、その案を事前に明らかにし、町民等からその案に対する意見の提出を受け、寄せられた意見を考慮して最 終的な案を決定する過程を公表していくこと、また寄せられた意見に対する行政側の考え方もあわせて公表していくことで、町民の「行政参画の機会」を提供す るとともに、町民に対する「応答義務(説明責任)」を果たし、行政運営の公正の確保と透明性の向上を図ろうとするものです。
2 定義
第2条
この要綱において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
- 「パ ブリック・コメント制度」 町の基本的な計画や条例等の策定過程において、案の段階でその趣旨、内容等を公表し、町民等からその政策に対する意見及び情 報(以下「意見等」という。)の提出を受け、その寄せられた意見等に対して町の考え方を公表するとともに、寄せられた意見等を考慮し実施機関の意思決定を 行う一連の手続きをいう。
- 「実施機関」 町長、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員、農業委員会、固定資産評価審査委員会及び水道事業管理者をいう。
- 「町民等」 町内に住所を有する者、町内に通勤又は通学する者、町内に事務所又は事業所を有するもの、本町に対して納税義務を有するもの、その他パブリック・コメント制度に係る事案に利害を有するものをいう。
【考え方】
- この制度は、平成11年から国において「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続」、いわゆるパブリック・コメント手続が実施されて以来、マスコミ等により一般的に認知されてきている呼称「パブリック・コメント」を制度の名称に用いるものです。
- 実施機関とは、この要綱によりパブリック・コメント制度を実施する町の機関をいいます。
- 本町に在住、在勤、在学する者、納税義務を有するもののほかに、本町以外に居住する利害関係者なども広く「町民等」として位置付け、パブリック・コメント制度の対象となる事案に意見提出できるものとします。
3 対象
第3条
パブリック・コメント制度の対象となるものは、町民生活又は事業活動に重大な影響を及ぼすと認められる政策の策定又は改定、及び条例の制定又は改廃のうち次のもの(以下「政策等」という。)とする。
- 町の基本的な施策に関する計画、指針を定めるもの
- 町政に関する基本方針を定めることを内容とする条例
- 町民等に義務を課し、又は権利を制限することを内容とする条例(ただし、町税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関する事項を除く。)
- 前各号に掲げるもののほか、実施機関が必要があると認めるもの
【考え方】
対象事項は、基本的に町民生活や事業活動に直接かつ大きな影響を与えるもので、町内全域または全町民等を対象とするものをいいます。職員の給与に関する ものなど行政内部にのみ適用されるものは対象外とします。
- 第 1項の「町の基本的な施策に関する計画、指針を定めるもの」については、将来の町の施策の基本方針、基本事項を定める計画や指針などをいい、その名称につ いては基本構想、プラン、方針など特に問いません。なお、道路(○○町の道路改修、側溝蓋かけなど)、河川(△△川の○○町付近の改修など)、公園(利用 対象者が地区に限定される公園の整備)などの個別地域での整備事業については原則として対象外としますが、基本的な考え方が町内全域または全町民等を対象 とするものについては対象となります。
- 「町政に関する基本方針を定めることを内容とする条例」については、町政全般や個別の行政分野における基本理念など町の進むべき方向性を定めるものをいいます。
- 「町民等に義務を課し、又は権利を制限することを内容とする条例」については、広く町民等に適用される規制を定める、地方自治法第14条第2項(注1)に基づく条例をさします。
また、「町税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関する事項」については、町民に義務を課すものに該当しますが、これらの金銭賦課徴収に 関する事項を対象とした場合、負担軽減を求める意見が多数を占める可能性が高く、賛否を問うことは、パブリック・コメント制度の趣旨に合致しないことなど から、対象から除外します。なお、地方自治法第74条第1項(注2)においては、地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものにつ いて、条例の制定・改廃の対象外となっています。 - 「前各号に掲げるもののほか、必要と認めるもの」については、広く町民等に適用される規則や要綱等があてはまり、特定の者などに対する個別的、具体的な処分は対象となりません。
(注1)地方自治法第14条第2項
普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。
(注2)地方自治法第74条第1項
普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の50分の1以上の者の連署をもって、その代表者から、普 通地方公共団体の長に対し、条例(地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除く。)の制定又は改廃の請求をすることができ る。
4 対象の適用除外
第4条
前条の規定にかかわらず、実施機関は、次の各号のいずれかに該当する場合はパブリック・コメント制度を実施しないことができる。
- 緊急を要するもの又は軽微なものである場合
- 政策等の策定に当たり、実施機関の裁量の余地がないと認められる場合
- 政策等の策定に当たり、附属機関又はこれに類するものにおいて、意見聴取の手続きが法令により定められている場合
- 附属機関又はこれに準ずる機関において、パブリック・コメント制度に準じた手続きを経て策定した報告、答申等に基づき、政策等を決定する場合
【考え方】
- 「緊急を要するもの」とは、パブリック・コメント制度実施に伴う所要期間の経過などにより、政策等の効果が損なわれるなどの理由で、パブリック・コメント制度を経る余裕がない場合をいいます。具体的には、災害などに緊急に対応する必要がある場合などに限られます。
また、「軽微なもの」とは、大幅な改正または基本的な事項の改定を伴わないものや上位の計画などの変更に伴う一部の表現変更をする場合をいいます。
なお、「緊急を要するもの」については、その事由がやんだのち、または政策実施後に、町民等からの意見等を聴くよう努めるものとします。 - 「実施機関の裁量の余地がないと認められる場合」とは、上位法令や国、県の計画にその内容が詳細に規定されており、その規定に沿った決定をしている場合をいいます。
- 「意 見聴取の手続きが法令により定められている場合」とは、法令などの規定により公聴会の開催などの実施が義務付けられている場合をいいます。ただし、出され た意見等に対する「応答義務(説明責任)=実施機関の考え方を示す」という点において、パブリック・コメント制度を実施した場合と同様の効果が期待できる よう努めなければなりません。また、法令などの規定に基づくことなく、実施機関の裁量で公聴会を実施する場合は、法令などの規定による開催ではないため、 パブリック・コメント制度を実施する必要があります。
(法令により公聴会の開催などが定められている場合の例)
例えば、都市計画の決定については、都市計画法により都市計画案の作成時に公聴会等を開催すること、また都市計画案を2週間縦覧しその案に対し住民から提出された意見書をもとに都市計画審議会で審議することが規定されています。 - 「パ ブリック・コメント制度に準じた手続きを経て策定した報告、答申などに基づいて、政策等を決定する場合」とは、審議会、協議会等の附属機関などにおいて既 にパブリック・コメント制度の実施と同様な方法により、報告、答申などがなされた場合には、その報告、答申などを尊重し、政策等を決定していくというもの です。その場合には、再度、パブリック・コメント制度を実施しないことができます。この場合、公表は審議会等の長の名前で行い、考え方の整理は審議会等で 議論することになります。
5 公表時期
第5条
実施機関は、第3条各号に掲げる政策等を策定しようとするときは、あらかじめ策定の意思決定前に相当の期間を設けて、案を公表しなければならない。
実施機関は、前項の規定により案を公表するときは、町民等が理解しやすいよう併せて次の各号に掲げる資料を公表するものとする。
- 案を作成した趣旨、目的及び背景
- 立案した際の実施機関の考え方及び論点
- その他参考資料
【考え方】
- 公表する時期は、政策等の決定期限などを考慮し、内容の修正など寄せられたご意見を反映することが十分可能な、素案の段階に実施します。
- 公 表する案は、作成された案そのものに限らず、その内容がわかるものであれば差し支えありません。公表する案および資料は、町民等がその内容を十分理解でき るよう、難解な表現を避けわかりやすいものとします。また、論点などを明確にし、町民等からの意見提出がしやすくなるようにするとともに、適切な判断がで きるよう必要かつ十分な量を提供するものとします。
また、条例案については、単に条文のみを公表するだけでなく、町民等にわかりやすいように「骨子等」を示すものとします。 - 案の公表に併せて公表する「その他参考資料」としては、次に掲げるものから、実施機関が必要に応じて準備します。
・当該政策等の概要
・根拠となる法令
・計画の策定または改定にあっては、上位計画の概要
・当該政策等の実施に伴い予測される影響の程度、範囲
・附属機関などで審議された概要もしくは報告、答申の内容
・公聴会で出された意見等の内容